第13回 JCC会員企業アンケート調査結果報告 (サマリー)
第13回 JCC会員企業アンケート調査結果報告サマリー
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はじめに
JCCでは5月9日から5月26日の約2週間に亘り、会員企業の実態を把握する目的で隔年企業アンケートを実施。 本アンケートでは既定質問31問(会員動向や、投資事業環境などを過去の結果と比較、発表することが目的)、特別質問14問(本年は30%ルーリング改定 (2027年以降、30%→27%に縮減)による影響、周辺国との関係性 について、米国による相互関税政策の影響について
JCC通常会員279社中221社(回答率79%)より御協力をいただき、蘭政府・関係機関への働きかけに資する、また、会員動向を勘案する数値を得ることができた。 改めて、会員各位のご協力に感謝の意を表したい。
1.調査概要
本アンケートは2000年に開始され、隔年で実施しており、今回で第13回目となります。過去3回の回答率は以下の通りです。
年度 | 回答率 |
2023年 | 65% |
2020年 | 67% |
2018年 | 60% |
2.会員企業の動向
- 会員数の推移
JCCの通常会員数は微増傾向にあり、2025年6月時点で279社(2023年:274社、2020年:275社)となっています。 - 現地事業体制
日系企業のオランダ進出および駐在員数は増加傾向にあり、現地マネジメントへの移行も進行中です(2020年:29%、2018年:26%、2016年:24%)。 - 企業規模別の傾向
従業員500名以上の大規模企業の構成比は安定(6〜7%)している一方、10名未満〜50名までの中小規模企業の比率は増加傾向です(2020年:71%、2018年:67%、2016年:65%)。 - 女性管理職の比率
女性管理職が「100%」の企業は2%、「0%」の企業は51%(2023年:60%)で減少傾向。女性比率が2〜5割の企業が増加しています。 - 業種別動向
機械・機器製造サービスが全体の38%を占め、最近ではコンサルティング、ITサービス、人材サービスの増加が目立っています。 - 業務形態・機能
「現地法人」が87%と最多。業務内容では欧州統括、販売・マーケティングが主で、製造、持株会社、物流拠点等も堅調に推移しています。
3.オランダの事業環境に関する評価
(1)メリット
- 英語力の高い労働力、地理的利便性、輸送・物流環境、税制の優遇、安定した政治経済、日本語対応の生活インフラ等が高評価。
- 一方で、政治の安定性(前回比-3%)、労働市場の有用性(同-9%)はやや評価が低下。
(2)デメリットおよび課題
- 「30%ルーリング」の改定等による企業・個人双方の税コスト上昇。
- 家賃や生活費の上昇、住宅供給の逼迫、労働力不足、賃金上昇などの課題が顕在化。
- ウクライナ情勢、移民問題、空港機能縮小等、地政学的・物流面の不確実性が増大。
(3)改善の兆し
- 行政手続きの簡素化、インフラ整備、デジタル化の進展。
- 働き方改革やビザ手続きの迅速化により、人材確保の障壁が低減。
- HR施策の浸透、経済成長、スタートアップ支援の強化など、全体的に前向きな動きが見られます。
4.今後の事業方針
- 「拡大」方針を示す企業:47%(2023年:50%)
- 「現状維持」:45%(2023年:45%)
- 「縮小」:6%(2023年:3%)
縮小理由の多くは、地理的優位性や事業効率性の見直しに関連しています。
5.特別質問への回答分析
5-1.「30%ルーリング」の改定影響
- 企業への影響
回答企業の75%が何らかの影響を認識。主な懸念はコスト上昇(93%)、人事戦略の影響(22%)、業務負担増(6%)。
派遣数の見直し(22%)、現地人材の登用強化(10%)など、組織戦略の変化が見られます。 - 政府への要望
- 適用期間延長:63.64%
- 新基準開始の延期、非課税枠の維持・拡大:各39.09%
- 適用条件の緩和:23.18%
- 手続き簡素化:16.82%
また、全世界所得課税の撤回、ビザ発給迅速化、社会保障協定の延長等への要望も多く挙がりました。
- 教育に関する意見
教育の自由度は評価される一方、しつけや協調性、責任感の育成を求める声も見られました。
5-2.周辺国との関係性
- 移転の検討状況
移転「検討中」:9%、「以前検討した」:21%。
移転理由は、人材確保難(39.39%)、地理的優位性の低下(30%)、市場縮小(24.24%)など。 - 移転候補国
- ドイツ:55.93%(最多)
- 東欧:27.12%
- 英国・その他EU各国:16.95%
- フランス:3.39%
5-3.米国関税の影響(参考)
- 調達・輸出:22%が米国から調達、19%が米国へ輸出
- 影響度:40%が「ある程度影響」、13%が「非常に大きな影響」
- 今後の対応:地産地消(19%)、調達先の多様化(26%)などで対応を模索中
6.その他の要望・提言
- 住宅供給不足の抜本的解消
- 行政対応の英語化、正確性の向上
- 30%ルーリングの制度維持・延長
- 過度な労働者保護政策の見直し
- 製造業における規制対応・ユーティリティコストへの支援