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2025年6月17日

第13回 JCC会員企業アンケート調査結果報告 (サマリー)

13 JCC会員企業アンケート調査結果報告サマリー

結果プレゼンテーション資料はこちらをご覧ください

はじめに

JCCでは5月9日から5月26日の約2週間に亘り、会員企業の実態を把握する目的で隔年企業アンケートを実施。 本アンケートでは既定質問31問(会員動向や、投資事業環境などを過去の結果と比較、発表することが目的)、特別質問14問(本年は30%ルーリング改定 (2027年以降、30%→27%に縮減)による影響、周辺国との関係性 について、米国による相互関税政策の影響について

JCC通常会員279社中221社(回答率79%)より御協力をいただき、蘭政府・関係機関への働きかけに資する、また、会員動向を勘案する数値を得ることができた。 改めて、会員各位のご協力に感謝の意を表したい。

1.調査概要

本アンケートは2000年に開始され、隔年で実施しており、今回で第13回目となります。過去3回の回答率は以下の通りです。

年度 回答率
2023年 65%
2020年 67%
2018年 60%

2.会員企業の動向

  • 会員数の推移
    JCCの通常会員数は微増傾向にあり、2025年6月時点で279社(2023年:274社、2020年:275社)となっています。
  • 現地事業体制
    日系企業のオランダ進出および駐在員数は増加傾向にあり、現地マネジメントへの移行も進行中です(2020年:29%、2018年:26%、2016年:24%)。
  • 企業規模別の傾向
    従業員500名以上の大規模企業の構成比は安定(6〜7%)している一方、10名未満〜50名までの中小規模企業の比率は増加傾向です(2020年:71%、2018年:67%、2016年:65%)。
  • 女性管理職の比率
    女性管理職が「100%」の企業は2%、「0%」の企業は51%(2023年:60%)で減少傾向。女性比率が2〜5割の企業が増加しています。
  • 業種別動向
    機械・機器製造サービスが全体の38%を占め、最近ではコンサルティング、ITサービス、人材サービスの増加が目立っています。
  • 業務形態・機能
    「現地法人」が87%と最多。業務内容では欧州統括、販売・マーケティングが主で、製造、持株会社、物流拠点等も堅調に推移しています。

3.オランダの事業環境に関する評価

1)メリット

  • 英語力の高い労働力、地理的利便性、輸送・物流環境、税制の優遇、安定した政治経済、日本語対応の生活インフラ等が高評価。
  • 一方で、政治の安定性(前回比-3%)、労働市場の有用性(同-9%)はやや評価が低下。

2)デメリットおよび課題

  • 「30%ルーリング」の改定等による企業・個人双方の税コスト上昇。
  • 家賃や生活費の上昇、住宅供給の逼迫、労働力不足、賃金上昇などの課題が顕在化。
  • ウクライナ情勢、移民問題、空港機能縮小等、地政学的・物流面の不確実性が増大。

3)改善の兆し

  • 行政手続きの簡素化、インフラ整備、デジタル化の進展。
  • 働き方改革やビザ手続きの迅速化により、人材確保の障壁が低減。
  • HR施策の浸透、経済成長、スタートアップ支援の強化など、全体的に前向きな動きが見られます。

4.今後の事業方針

  • 「拡大」方針を示す企業:47%(2023年:50%)
  • 「現状維持」:45%(2023年:45%)
  • 「縮小」:6%(2023年:3%)

縮小理由の多くは、地理的優位性や事業効率性の見直しに関連しています。

5.特別質問への回答分析

5-1.「30%ルーリング」の改定影響

  • 企業への影響
    回答企業の75%が何らかの影響を認識。主な懸念はコスト上昇(93%)、人事戦略の影響(22%)、業務負担増(6%)。
    派遣数の見直し(22%)、現地人材の登用強化(10%)など、組織戦略の変化が見られます。
  • 政府への要望
    • 適用期間延長:63.64%
    • 新基準開始の延期、非課税枠の維持・拡大:各39.09%
    • 適用条件の緩和:23.18%
    • 手続き簡素化:16.82%
      また、全世界所得課税の撤回、ビザ発給迅速化、社会保障協定の延長等への要望も多く挙がりました。
  • 教育に関する意見
    教育の自由度は評価される一方、しつけや協調性、責任感の育成を求める声も見られました。

5-2.周辺国との関係性

  • 移転の検討状況
    移転「検討中」:9%、「以前検討した」:21%。
    移転理由は、人材確保難(39.39%)、地理的優位性の低下(30%)、市場縮小(24.24%)など。
  • 移転候補国
    • ドイツ:55.93%(最多)
    • 東欧:27.12%
    • 英国・その他EU各国:16.95%
    • フランス:3.39%

5-3.米国関税の影響(参考)

  • 調達・輸出:22%が米国から調達、19%が米国へ輸出
  • 影響度:40%が「ある程度影響」、13%が「非常に大きな影響」
  • 今後の対応:地産地消(19%)、調達先の多様化(26%)などで対応を模索中

6.その他の要望・提言

  1. 住宅供給不足の抜本的解消
  2. 行政対応の英語化、正確性の向上
  3. 30%ルーリングの制度維持・延長
  4. 過度な労働者保護政策の見直し
  5. 製造業における規制対応・ユーティリティコストへの支援

2025年6月17日