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2023年12月3日

16 エチケット

  1. 隣人、知人とのつきあい

「郷に入れば郷に従え」の諺の通り、オランダには、日本と異なる習慣やエチケットがあります。ただ、それほど硬く考えず、自分流に取り入れる工夫をするとよいでしょう。

 

【引っ越した時】

お隣に一言挨拶に行って自己紹介をすると、お互いどのような人物かわかりますし、いざという時には隣人同士助け合うこともできます。適当な折に軽いもてなしに招待するのもよいでしょう。

 

【軽いおもてなし】

時間によって少しずつもてなしの内容が異なりますが、大体次のようになります。

  • 10:00~12:00:コーヒー、お茶(ティー)とお菓子でもてなします。
  • 14:30~17:00:コーヒー、お茶(ティー)とお菓子でもてなします。
  • 18:00~19:00:オランダの家庭では夕食を夕方6時にとるところが多いので、この時間帯に家に招待されたり招待したりした場合、夕食をともにすることが多いです。
  • 17時~夕食時まで、あるいは夕食後約20:00 以降:Borrel(食前あるいは食後のドリンク)夕食前の軽いドリンク、あるいは既に済ませてきた後のことになります。コーヒーとお菓子、場合によってはワインやジェネバなどのお酒を勧めます。

2.ディナーに招かれた時

ディナーはやはり、少し改まった雰囲気になります。招く側もテーブルをきれいに整えて張り切ります。但し、あまり堅苦しくならず十分に会話や食事を楽しんで下さい。雰囲気や形式や楽しみ方は様々でしょうが、以下にその典型的な例を想定してみました。

◆時間はできるだけ守ります。招待側は時間に合わせてディナーの支度をしますので遅く行き過ぎると迷惑になるかも知れません。

◆服装は、カジュアルでよい場合も多いのですが、様子が分からない場合はワンピースやスーツの方が無難です。

◆手土産にはお花、ワイン、チョコレートなどがオランダではポピュラーのようです。あれば日本的な菓子(お煎餅)なども喜ばれます。

◆挨拶は招待側のホスト、ホステスだけでなくその場にいる他の人々とも握手し、はっきりと自分の名前を伝え合います。そして、相手の名前も覚えて、その名前で呼び掛けましょう。大勢の場合、一度では覚えられませんが、忘れてしまったら相手に聞き直すことは少しも恥ずかしいことではありません。

◆どの席につくかは、ホスト・ホステスの指示があるまで待ちます。

◆テーブルにつく前に、まずアペリティフが出されるのが普通です。「何を召し上がりますか」と聞かれたら、遠慮なく欲しいものを言います。「どんな飲み物がありますか。」と聞くこともできます。アルコールがだめであれば、その旨を伝えてジュースなり、ミネラルウォーターなりを頼みます。飲む前にグラスを挙げて”proost”(プロースト=乾杯)と言います。

◆テーブルについて食事を始める時、飲み物が全員のグラスに注がれるまで待ちます。そして、他の人々と一緒にグラスを取り上げ目礼しながら”proost”と言います。オランダの乾杯の特徴は、乾杯で一口飲んだ後再びグラスを上げて挨拶し合うことです。食事はホスト、ホステスが食べ始めるまで待ちます。

◆各人のお皿に料理がそろう前に先に手をつけないように。食べ始める時に”Eet smakelijk”(エィト・スマークルック=おいしく召し上がれ)と同席の人々に声を掛けます。

◆食事中は和やかに歓談し、料理を褒めることも忘れないこと。

◆食後はおしゃべりタイムとなります。コーヒー、紅茶を飲みながら、会話を楽しみます。

 

【日にちと時間の約束】

オランダでは、日付を書くとき、日-月-年の順に書きます。月日でだけの時もこの順番です。メモや伝言などに3/4とあったら、それは3月4日ではなく、4月3日のことです。日本と反対ですので注意を。

また、時間を言うとき、オランダ語では例えば3時半を4時の半時間前、という言い方をします。紛らわしいので、オランダ人も英語で喋っていると混乱することがあります。何時半、と約束するときは、英語で喋っていても必ず「3:30 p.m.?」等のように数字で確認した方が無難です。

 

  1. 慶事・弔事のエチケット

誕生日 (Verjaardag)

自分の誕生日には、子供は学校へお菓子や果物を持参して配ります(traktatie(トラクターチェ)(学校によっては甘いものを禁じている場合があるので、確認した方がよい。イスラム系の子供がいる場合は、牛肉の入ったソーセージ類が入ったものなども注意。最近アレルギーのある子供も多いので、先生に確認。)

大人の場合には、誕生日を迎える当人がパーティーを催します。親しい友人を招いて簡単な昼食会や、お茶の会で十分です。職場では、誕生日を迎える当人がケーキやお菓子を同僚達に配る習慣があります。

お誕生日を迎えた人には“Lang zal hij/ze leven!”(末永く生きるよう!)を歌ってあげます。この歌は、おめでたいことがある時によく歌われるので、覚えておくとよいでしょう。>ビデオを見る

誕生パーティーに招かれたら必ずカードとプレゼントを持参します。親しい相手であれば、何が欲しいか予め尋ねてもかまいません。もし、招待を受けていても都合で行けない場合には、必ずお祝いのカードを送ります。

 

婚約 (Verloving)

 婚約したカップルは、小さな封筒に二人の名刺を入れて、友人、知人に配ったり、連名で婚約を知らせるカードを送ったりします。こうしたカードを受け取っても、特に婚約を祝うパーティーが開かれない場合にはプレゼントを贈る必要はありません(後で、結婚式かその後に贈ります)。お祝いのカードを送るなり、電話で祝福の言葉を述べるだけで十分でしょう。

 

結婚式 (Huwelijk/Bruiloft)

結婚式は、市役所での式、教会での式、そして軽くおつまみと飲み物を出すレセプションかディナーを伴う披露宴に分かれます。ディナーへの出席でない限り、返事を出す必要はありませんが、カードに、R.S.V.P.とあれば、返事をする必要があります。レセプションかディナーに招待されたらプレゼントを持参します。但し、前もってプレゼントしてあれば持参する必要はありません。

通常、婚約が成立した時に、カップルがギフトリスト(Cadeaulijst)を作ります。このリストの中の品を選んでプレゼントするのが無難です。このリストは高級食器店などに託されていることもあります。この場合は、その店に出かけて、リストの中から品物を選んで贈ります。

 

結婚記念日 (Trouwdag)

 12 年半の銅婚式、25 年の銀婚式、50 年の金婚式などがあります。記念日を迎えるカップルがパーティーを主催して、親しい友人、子供たちに囲まれて祝います。あるいは、友人や子供達がパーティーのお膳立てをすることもあります。こうしたパーティーに招待されたら、親しさの程度に応じたプレゼントを持参します。招待状に「封筒の絵」が印刷されている場合は、いくらかのお金を封筒に入れてプレゼントします。

 

出産 (Geboorte)

出産後日を置かずして、赤ちゃんの名前、生まれた日時、体重などを印刷したカードを送ります。

このカードを受け取ったら、お祝いのカードを送ります。大変親しい間柄であれば、お祝いの品を持参して訪問することもありますが、この場合には、相手の都合をよく確かめます(カードに訪問時間が記してある場合も多い)。

赤ちゃんの両親は”beschuit met muisjes”(ベスハウト・メット・マウシェス)を用意して、訪れてくれた人々や、ご近所、勤務先などで配ります。また、弟、妹が生まれた子供も同様に学校で配ります。これは、オランダの円形ラスク(ベスハウト)にバターを塗り、パン用ふりかけとでも言うべき砂糖をコーティングしたアニスの実(マウシェス=ねずみ)をかけたもので、男の子にはブルー、女の子にはピンクの muisjes をかけます。スーパーやパン屋で売っています。

 

葬式 (Begrafenis)

 親しい人には電話で知らせることもありますが、通常は通知が来ます。葬儀場や教会の所在地も記載してありますから、なるべく喪服に近い、地味な色の衣服を着けて出席します。もし、このカードに”geen bezoek”(訪問お断り)とあったら、自宅への訪問はせず、会葬のみします。また”in alle stilte”(密葬)としてある場合は参列を見合わせます。また、”geen bloemen”(献花お断り)と記載してあれば、献花はしません。オランダには香典の習慣はありません。教会での告別式の後に、家族や親しい人々は墓地や火葬場まで行きますが、同行することになるかは、その場の状況から判断します。葬儀の後は通常飲み物や軽食が供されます。もし参列できない場合には、お悔やみの言葉をカード(Rouwkaart)で送るとよいでしょう。オランダでは一般に極内輪の人しか葬儀に参列しません。会社の同僚の家族が亡くなっても会社として関わることはありません。その同僚が個人的な友人であれば当然その資格で参列しますが、それだけに葬儀に参列すると感銘を与えるようです。

 

戦没者記念日Dodenherdenking

5月4日は大戦で亡くなった人々を記念し、慰霊の催し物が各地で行われます。午後8時には、オランダ全土で2分間の黙祷が行われ、この間オランダ全土の公共交通機関はすべて一時停止します。レストランなどでは8時前に趣旨の説明があり、黙祷するようにという案内があります。特に屋外や市街にいる時は、黙祷するか、静粛を保つようにします。

 

【オランダの祝祭日・記念日】

新年 Nieuwjaarsdag

*聖金曜日 Goede Vrijdag

*復活祭 Pasen

国王の日 Koningdag(4 月 27 日)

戦没者記念日 Dodenherdenking(5 月 4 日、休日ではない 20 時追悼式典がある。)

解放記念日 Bevrijdingsdag(5 年毎休日、2015 年、2020 年・・・)

*昇天祭 Hemelvaartsdag

*聖霊降臨祭 Pinklsteren

シントニコラス祭 Sint Nicolaas(休日ではないが早めに終業する会社もある)

クリスマス Kerst

*印の祝祭日は年により日が変わります。

 

4. その他のエチケット

【チップについて】

オランダではチップは「自由」とされていますが、最近では、レストランのお勘定の際に「いくらチップを上乗せするか」と押しつけがましい注意書きがあったり、支払い機(pinautomaat)の画面にいくらチップを上乗せするかを選択するものが増えています。ひと昔前は現金でおつりの小銭を置いていくということもありましたが、最近は現金での支払いも減ってきているところ、お代の5%-10%くらいをチップとして上乗せすることが多いようです。

年末になると、新聞配達の子供達がクリスマスカードを持って各戸を回ります。この時にも数ユーロ程度あげるのが習慣です。

 

【プレゼントの交換】

プレゼントを頂いたら、すぐその場で包みを開いて見てから、お礼を言います。頂いたプレゼントに対して直後にお返しをする必要はありません。

 

【花屋に依頼して花を贈る】

花の贈り物はどんな場合にも喜ばれます。自分で持参できない時は、近くの花屋さんに日時を指定し、住所を伝えれば届けてくれます。贈り主がわかるようにカードを添えます。大きな花屋では、国外へ花を送る手配もしてくれます(インターフローラの看板を出している花屋が扱っています)。送り先によっては最低額が決まっている場合もあります。相手国の提携先の花屋に連絡が行き、そこから花が届けられる仕組みになっています。

 

  1. オランダの諺(Spreekwoord)

オランダの”Spreekwoord verklaard”、つまり諺辞典を見ると、boer(農夫、お百姓)にまつわる諺が沢山あります。

 

★Lachen als een boer die kiespijn heeft.(虫歯が痛くて仕方ない農夫が無理をして大口を開けて笑うさま)

これは、他人がたとえ馬鹿にして嗤っている時でも一緒になって笑いとばしてしまえ、という教え。

★Een zuinige vrouw is de beste spaarpot.(やりくり上手な奥さんは、最良の貯金箱である。)

★Kleine kinderen, kleine zorgen, grote kinderen, grote zorgen.(小さい子には小さな心配事、大きい子には大きな心配事。)

★ Wie zijn kinderen lief heeft, kastijdt ze.(本当に子供を愛する人は、罰も与える。)

★Een kinderhand is gauw gevuld.(子供の手は直ぐに一杯になる。)

子供というものは、ほんの小さいプレゼントでも喜ぶ。大げさな品物をやたらに与えるべきではない。

上の三つの諺には、「親のとるべき健全で正しい態度、子供を大事に育てようという姿勢」が込められています。

オランダも昔は「子沢山」でした。10 人も子供がいるという家庭が当たり前だったようです。沢山の子供を大事に育てる過程の中で、これらの諺が作られ、今に至っているわけです。

テーマとなる頻度の高いもうひとつの言葉が、Geld(お金)です。

★Geld baart zorg.(お金は心配事をもたらす)

お金があればあったで、どこに貯金する、どうやって活用する等々の心配事が出てくる。

★Geld maakt niet gelukkig.(お金で幸福にはなれない。)

この他にもお金さえあれば...という意味の諺が非常に多いですが、これはオランダ人の「商売人気質」を表すと考えられます。遠くインドネシア等東南アジアへ船を送って、香料、陶器等ヨーロッパ諸国で珍重されたエキゾティックな品々を持って帰り、大儲けをして華々しく「オランダ黄金時代」を17世紀に迎えた当時のオランダ商人達にとって「お金はオールマイティー」という考えが定着して生きる知恵となったことは容易に想像できます。

面白い表現としては、日本の「猫に小判」は、オランダでは”Parels voorde Zwijnen.” 「ブタに真珠」と言います。

2023年12月3日